或る夜中に、ぼとん、と云ふ音がしたので廊下に行くと、守宮がひたひたと這ひ囘つてゐたので、ひよいと摘み上げ、窗から外へ投げて遣つた。
また或る夜中に、ぼとん、と云ふ音がしたので廊下に行くと、百足がごそごそと這ひ擦つてゐたので、割箸で摘み上げ、厠の便器に抛り込んで遣つた。
更に或る夜中に、ごとん、という音がしたので廊下に行くと、女の生首がぐらんぐらんと轉がり囘つてゐたので、兩手で掴み上げて、「おい。お前が此處にゐることは誰も知らないのだからね。もう一寸我慢してゐなさい」と言い聞かし、其の儘、小さな丸椅子を踏み臺にして、天井の隱し部屋の方に投げ戾して遣つた。
女の生首は、「もう、此れ切りにして下さいね、屹度、屹度ですよ」とやや聲高な調子で叫んでゐたが、それも軈て聞こえなくなり、後は靜かな夜が殘る許りであつた。