むかし、僕にはえくぼがあった。その頃には紅顔の美少年だったので、えくぼがかわいいとよく言われたもんだ。それが、いつのまにかなくなっている。というか、「あ、えくぼだ」と言われることがなくなったし、鏡見て、「にぃっ」と笑うこともないので、実際あるのかないのかわからないのである。ま、あってもなくてもどっちでもいいのだが。

そのえくぼができるときの音を、どういうふうに表現するか。

ぽつん?

ex. 「あ、えくぼがぽつんとできてるよ」……うーん、しっくりこない。「ぽつん」には突起している感じがある。

ちょこん?

ex. 「あ、えくぼがちょこんとできてるよ」……うーん、「ちょこん」は小さいものが乗っかっている感じしかないなあ。

ぽこ?

ex.「あ、えくぼがぽこっとできてるよ」……お、これは少し近い感じ。ただ、えくぼに対して「ぽこ」はちょっと大きい感じがしてしまうんだよなあ。

実例 

正解というわけではないが、読んでいた佐藤さとる『豆つぶほどの小さないぬ』(講談社文庫)に実例が出ていた。コロボックルたちが”えくぼのぼうや”と呼ばれている男の子について話しているところ。
「そういえば、めったにわらわないけど、わらうと、ぺっこり、えくぼができるな」
(89p: 太字強調は引用者による)
これを読んでいて、桂枝雀の『高津の富』のうち、富くじの二番を当てる夢を見たという男が、当たったら新町にいる馴染みの女を身請けしたいと惚気ける場面で、その女のことを、「笑うとえくぼがぺこっ!」と表現することを思い出した。

正直なところを言うと、「ぺこ/ぺっこり」はもうちょっと平べったいものがへこんだ感じがしてしまい、えくぼとはあまりそぐわないような気もするが、おそらく「へこむ」という言葉より派生したであろう「ぺこ/ぺっこり」は、えくぼ表現としては正統なのであろう、ということが察せられる。