(全然知識がないくせに知ったかぶりをしてしまうのだが)ことしのTIFでベビレが『夜明け』を解禁したのってほんと感動的だったよなあなんて思うのだけれども、アイドルの話題がすこしでも盛り上がるとよそからなにも知らないやつがやってきて、「え? これが人気あるの? 歌へたなのに? かわいくないのに?」などとコメントするのを見ると、文脈も知らないやつが口出しすんじゃねーよ(ベビレは歌うまいし、かわいいけどな!)、などという文句と一緒に一生さかまつげに苦しむ呪いをかけたくなるのだが、いまからそれと似たようなことをしようと思っている。「それ」というのは、呪うほうではなく、「え? なにこれ?」とトンチンカンなコメントをするほうである。

といって、いままで8ヶ月ものあいだ毎週45分の時間と持ちうる限りの忍耐力とあるいはネット社会で研鑽してきたスルー力とを総動員させて観つづけてきた人たちに対して相当の敬意を抱いている僕は、その対象を直接名指す勇気も持てず、ただ『Nトラ』とその名前の一部を匿さずには書けない。大河ドラマ、『Nトラ』。新型の燃費効率のいいトラックみたい。
今週、弟からの勧めがあって、ものすごくひさーしぶりに当該ドラマを観る機会があったのだが、あらためて「すごいな」と感じた。

まず、どこの国の誰の話をしているのかがぴんとこない。観ていないから、だけが理由ではないはずだ。公式サイトの「登場人物」のトップのところを見たら、信玄、信長、家康は除けば、あとは誰ひとり知らない人物だった。いや、今川氏真がいた。義元ならともかく、氏真! 『信長の野望』で使ったことないよ、このキャラ!
ゆえあって囚えられた高橋一生を「かしら」と呼ばれる柳楽優弥が助けに行ったら(行けちゃうんだ……)、案の定というか、高橋一生がそれを拒む。まあ、今回死ぬってわかっているので、「よし、一緒に出よう」とか言われると困ってしまうのだが、そのときそのかしらに、あんたが死んだら柴崎が困るよ、と伝えられると、高橋が「(おれが死んでも)おしょうさんがいる」みたいなことをい言っていて、「おしょうさん!」って思った。反対に、和尚さんひとりが頑張ってどうにかなってしまうくらい、ちっちゃい家ってことなんだろうか。そのうえ高橋、「それに、」とつけくわえる。「かしらもいる」と。「かしら!」
おしょうさんとかしらのふたりがいるから、だいじょうぶ。
もう平仮名で書いちゃうよね。坊主と盗賊が盛り立てる戦国武将。そりゃ、聞いたことないはずだよ。『信長の野望』にも出てこないか、出ているのかもしれないけれど、雑魚キャラだよ(たぶん)。すなおに井伊直政(赤備え)を主人公にすりゃあよかったのに。

そしてひとりひとりのキャラクター性が薄いうえに全体の登場人物数も少ないためか、各個人が長々としゃべっている印象を受けた。その内容が面白ければよいのだが、これまた、なーんかぴんとこない。あとから振り返ってみると、たぶん史実としては高橋はほんとうの裏切り者なのだろうが、ドラマ内では、罠に嵌められて裏切り者になってしまう、という体をつくるために四苦八苦しているようで、まあそれは脚本家の仕事なのだからけっして悪いとは思わないけれど、柴崎がずっと同じことを言っているような気がしてしまって、間延びを感じたのは事実。それが単調な演技技術のせいなのか、脚本のせいなのかはわからない。あるいは、背景がずっと同じような印象を受けた、ということにも一因があるのかも。しょっちゅう、お寺にいるよね。

あと、今回は全体的に言って、高橋一生のプロモーションビデオの感があったな。山口紗弥加の膝のうえでにかっと爽やかに笑うところとか、なんか「サーヴィスしていますよ」なショットだった。そういうところに、あらためて高橋一生が「ブレイク」したのだという事実を痛感することとなり、非常に感慨深い。ちょっと前の官兵衛にも出ていたんだけどねー。

その高橋の死ぬところ、たしかに見応えはあった。よりこけたように感じられた頬などが、まだほっそりとしていた時代の上川隆也を彷彿とさせるところがあった。もちろん、声の出し方や迫力なども。
彼のセリフがいちいち反語になっていて柴崎への最期のエールになっていた、ということくらいは一見の僕にでもわかって、ここは実にいい場面だなあとも思ったのだが、いかんせん彼の胸を突いているのが尼さんでありまして、こちらも一所懸命にやってはいるのだろうけれど、格があまりにも違いすぎて、非常にもったいなくも感じられた。
といって、「じゃあ、柴崎じゃなかったら誰がよかったのか」問題というのもあって、主演とはいえ、このクソマイナーな武将(ともいえない人物)を演じるというのは火中の栗を拾うようなもので、たかだか2年前なのにもうなかったことにされている(と個人的に感じている)井上真央の主演および作品などは、「あれはひどかった」的な仕方でしか回顧されないってのもかわいそうな話。実際は、まったく観ていないから批難すらできないのだけれども。いや、観てみたら名作なのかもしれないけどね。

というわけで、ハヴ・ア・ブレイク的な感じで『Nトラ』をひさしぶりに観たことを書いておいた。ファンのみなさまにおかれましては、今後はなにをよすがに今ドラマを観つづけていくのかをぜひお訊きしたいところですが、たぶん僕などがまったくあずかり知らない傑作キャラクターたちが幾人もいて、それらが物語を盛り上げていくのだろうと思います。これは本当に皮肉抜きで書くのだけれど、どんなドラマにだっていいところはあるもんだからね。
僕は今後の展開にあまり興味が持てなかったので、このままリタイアします。