きっと麻耶雄嵩の作品ってのは、「これはあのトリックのアンチテーゼだな」なんてことを察せられるミステリ素養と、「ハッハッハッ」と笑い飛ばせるような大きな度量がないとダメなんだろう。
ちょっとしか読んでいないが、清涼院流水のトンデモと言ってもあながち言い過ぎではない作品(犯人は誰でもいい、みたいな結論のもたしかあった)はまったく受け容れられるというのに、麻耶になるとちょっと辛い、というのは好悪の問題なのかなとも思う。
清涼院のほうはキャラクターがめちゃくちゃ立っている(正確にはキャラクターの「設定」が立っている)けれど、麻耶のほうはそれすらもなく、文章もどうでもいいレベルだし、笑うこともできなければ相当な苦行にもなってしまうし、実際なりかけていたのだが、ただ、この短篇集のなかにひとつだけ叙述トリックで驚かされたものがあったので、「最悪」という評価はしなくて済んだ。
そのやり方がフェアとかアンフェアだとかいうのはもう二の次で、目新しさを獲得できればとりあえず元はとれたという気がした。最後の数ページで読者を「えっ、えっ、えっ?」とびっくりさせるために、作者はあの手この手をいろいろとひねくりだしたんだろうなと考えると、そこに敬意の萌芽のようなものを感じざるを得ないしね。
なお、この作品(と他の作品とのミックス?)はテレビドラマ化されたらしい。観ていないで言うのもなんだが、絶対成功しなかっただろうなって思う。テレビドラマ業界、そんなにネタがないのかね?