副題が「メルカトル鮎最後の事件」となっているが、れっきとしたデビュー作。じゃあなんで「最後の事件」なんだっていうツッコミは当然起こるし、また、そもそもメルカトル鮎っていうネーミングがなあ、っていうツッコミも。
こういう隙をあえて見せてくるタイプはたいてい手強く、実際、まあいろいろと衒学的な記述が出てくるのだが、しかし僕みたいに質の悪い読者ともなれば、「どうせこんな情報、殺人やトリックと関係ないんでしょ」とはじめから高をくくってしまい、ほとんどを本気にとらないために、書き手の熱意以外はあまり伝わらなかった。それは、執筆当時、若干21歳で現役大学生だった作者に相当失礼な部分もあったと思うのだが。

かつて読んだ『隻眼の少女』のように、本作も最後らへんで話がやたらとひっくり返る。ただ、かなり技巧的というかあざとい部分があるので、ひっくり返される快感および驚きがほとんどなかった。というか、警察が出入りするなか10人ほどが殺されているという状況を、まず飲み込むことはできなかったし、「もう誰が犯人でもいいし、誰が謎解きしてもいいよ」って感じだった。これは、僕のミステリ読みとしての熟度不足のせいか、はたまた、作者の描いたキャラクターの魅力不足のせいか、どっちのせいだろう。
けっきょくこの作品についても、悪い意味での箱庭的感覚と、僕自身のミステリへの適応能力不足とが味わわれ、いまさらながら「なんかミステリが性に合っていないのかも」とちょっと自信をなくしてしまうほど。作者の労苦はよくよくわかっているつもりなのだが……たのしくないんだよねえ。

まあ、かなり当たりが少ないってことを実感しているため、しばらく麻耶作品は読まなくてもいいかな。