たしか米朝の芸談にあった逸話だと思うのだが、ある紙切りの芸人が楽屋で、芸に使う目的で何十匹分ものネズミの形(かた)を切り抜いていた。一区切りついて、彼はちょっと席を外した。
しばらく経ってから楽屋に戻ってくると、さきほどまで机のうえに置いておいた、何十匹というネズミの形がなくなっていて、その代りにネコの形がひとつだけ置いてあった。これを前にしてその紙切り、「これを怒ったら……洒落のわからんやつゆうことになるんやろなあ」と苦笑したという。
かなりキツイ洒落だとは思うが、こういう悪ふざけも消化して、できれば芸談のひとつに昇華させて飯のタネにする、ってのが芸人の世界の一部ということでもあるのだろう。

バンクシーの作品が、オークションで落札された直後にシュレッダーされた、というのがニュースになっている。文章だけ読めば「は? なに言ってんの?」な話だが、まあこんな感じ。
この映像を見たとき、冒頭のエピソードを思い出した。
この「行為」が法的にどういう扱いを受けるのかそれはわからないが、藝術・アートという世界にも「これを怒ったら……洒落のわからんやつゆうことになるんやろなあ」という考え方は通用しそう。というか、これを業界の人間が本気で怒ってしまったら、藝術だとかアートというもの全体の価値を下げることになると思う。もちろん、創れないし買えないし、鑑賞すらしない人間はなにを言おうと勝手だけどね。