弟に薦められて年末に観た。
サイレント映画においてスターだったということをまさしく証明するジャン・デュジャルダンの雄弁な表情。ユーモラスでとても愛らしいベレニス・ベジョ(特にダンス!)。そして、全体を彩る行き届いたサイレント・ムービー的演出。作品中、たった2回だけ「音が出る」場面があるが、そのどちらもが拍手を送りたくなるすばらしい演出だった。
本作の特徴として、スターである/あった主人公が善良ということがある。なので、ヒロインの思慕、尊敬、憐憫の感情が100%正当に見える。2012年の映画だから、この点において一点の陰りもない描写が可能であったろうし、また、オスカーもすんなりと(?)獲得できたのかもしれない。なにが言いたいかというと、2017年のワインスタインへの告発から始まった映画業界における性的ハラスメントおよび性的暴力は、視聴者にとっての前提知識となってしまったということ。もし『アーティスト』が2018年の映画だったら、「ファンタジーにすぎる」とか「美化されすぎだ」みたいな批判が相対的に多くなったはずだ。しかし僕は、たとえ2018年の映画だったとしても、本作を高く評価したに違いない。きれいごと・理想論であるから批難するという論理は、ノンフィクションでない以上、ピントがずれているように感じるからだ。
作中でほかに印象に残ったのは、主人公が乾坤一擲の思いで撮影した映画の封切り日にガラガラだった館内。あそこは胸が締めつけられるような思いだった。ちょうど僕の好きなものや思い入れの深いものが昨年にいろいろとなくなったり終わったりしてしまっていたものだから、僕自身が時代から取り残されているという感覚と重なってしまったのだ。