とはいえ、わからないでもない

カテゴリ: 嫌いなことば辞典

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れじぇんど【レジェンド】
(名)<英 legend> 伝説。伝説的人物。生きていても、過去に非常な業績を収めた者について敬意を込めていう場合がある。

今年の流行語の候補のひとつに「伝説(レジェンド)」っていうのが出てくると思うのだけれど、いやな言葉だ。
この言葉が注目されたのはおそらく、今年の冬季五輪(すでに懐かしい)に当時四十一歳のジャンプの葛西が活躍したからだが、しかしオリンピックシーズンが始まる以前、冬季スポーツ関係者以外で、葛西が海外でレジェンドと呼ばれていることを誰が知っていただろうか。というより、葛西がまだジャンプをつづけていることすら知っている者は少なかっただろう。
それが、「海外でレジェンドと呼ばれている」という、この逆輸入的な「箔付け」が、この言葉に特別性を持たせ、葛西自身(最初「火災地震」と変換された)の人気・期待につながった。この経緯はいかにも日本的である。その期待にみごと応えた葛西が非常に立派なのはいうまでもない。

けれども、「レジェンド」という言葉が遣われだしたのはなにも今年がはじめてということではない。僕が確実に記憶しているのは、2009年のドリームマッチで内村光良松本人志がコンビを組むということになったとき、誰かが「うわーレジェンドだよー、たのしみー」と言ったこと。そのときにも「ん? レジェンド?」と不思議に思いもしなかったので、おそらくそれ以前にも、テレビ業界では遣われていた言葉だったのだろう。
あるいは、週刊プレイボーイに連載されていた(いまもされている?)『キン肉マンII世』で、前作『キン肉マン』に登場した超人たちを、「伝説的超人」と書いて「レジェンド」とルビを振っていたことも思い出される。
これらを考えるに、「レジェンド」はなにも特別な言葉ではなかったのだろうが、今回のオリンピックでの葛西の活躍によってより人口に膾炙されたということで、流行語になったのではないか、と僕は見ているのだが、これはまったく調べずに書いているので、ネットで検索すれば、「最も古い使用例(初出)」はたぶん簡単に出てくると思う。


今年の五月頃に大阪でおこなわれた柳家三三の独演会に行ったとき、三三が高座に上がったのと同時に「待ってました!」の声がかかって驚いた。
ええ?
率直に言って、僕は早すぎると思った。三三の生の芸を見るのはそのときが初めてで、つまり三三の芸の出来不出来もわからない状態だったが、それでも「待ってました!」と声をかけるには早すぎると思った。
たしかに三三の高座はたのしみにはしていたけれど、それでも芸歴二十年ちょっとの噺家(落語家界でいえば、やっと中堅くらいだろうか)に対して、そんなにおだててしまってよいのだろうか。
『大工調べ』のマクラで古今亭志ん朝は、「いま(当時)の芸能の世界に名人は出てこない。それは、お客さんが厳しくなくなったせいだ」と言っていたが、それはある面では正しいと思う。
三三は、「情熱大陸」を見た限りでは落語の稽古に対してものすごく勤勉で熱心らしい。だから、たかが一回の「待ってました!」などで慢心するような噺家では決してないだろうと思う。
しかし、それだからといって客は甘えさせてはいけない。落語家は寿命が長いのだ。彼が三十年、四十年とキャリアを重ねて十一代目の小三治なんかを襲ったときに、はじめて「待ってました!」と声をかけたって遅くはないだろう。
実際にその高座を聴いてみて僕は、なるほどいいなと思う反面、少し首を傾げるところもあった。それは以前に書いた。休憩前の『富久』であんなに客を寝かせてしまったのを見て僕は、ますます、「待ってました!」は早すぎたという思いを強めた。


今年の何月かにタモリの「笑っていいとも」が終って、そのバカ騒ぎを文字通りバカみたいだと感じていたことも、すでに書いたことがある。
あのバカらしさは、まさに上に書いたことと直結している。その根本にあるのは、客の方の、いま自分の見ているもの・体験していることを伝説としてとらえたい、という非常にバカらしい欲求だ。内容のうんぬんではなく、その伝説的瞬間――その「伝説」の根拠は視聴者自身の喧伝なのだが――に立ち会いたい・立ち会えたという野次馬的好奇心が、あのバカ騒ぎの根幹なのであり、そこに、もはやロートルと形容してもかまわない「元」人気芸人たちが大勢出演して盛り上がりに拍車をかけていたというのは、逆説的な意味で面白い。
その「元」人気芸人たちも、あの最終回の場に出演したことによって、自らをレジェンドあるいはレジェンドの一部と見なしていたのだとすれば、いま自分の見ているもの・体験していることを伝説としてとらえたい、という欲望の輪は二重になっていたということで、その二重の輪の中心にあったタモリだけが、たぶんひとり醒めていたのだろうと思う。

死んでもないうちから芸人たちを伝説化することに、僕はものすごく反対である。

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どっかん-どっかん【ドッカンドッカン】
(副)お笑いなどで、観客席が大いにウケている様子。または、周囲が大いにウケている様子。

いつ頃からか知らないが、「客席がドッカンドッカン言って、」みたいな表現を耳にするようになった。関西特有の表現なのかと思ったが、どうもそれだけではないらしい。
芸人がこのように表現するのはまだ許せるが、素人でこのように表現するのは大っ嫌い。また、素人にしても玄人にしても、こう言うやつで面白かった例がない。

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